京都精華大学情報館 次長 藤岡さん

 

 

情報館が出来るまで約10年かかっています。

初めは新しい図書館を建てるという計画を経営の方から受け話し合い(図書館だけではなく施設、教学、理事会といった全学的に)を始めました。どういった図書館にするのかは図書館側でリードしないと描けないので事業のヴィジョンを描くのが図書館の大きな仕事になりました。その中で組織を改革するということが具体的に出てきました。

 

なぜ組織を改革しなければならないのかということなんですが、

 

京都精華大学では図書館(全学施設)AVセンター(学部施設)とがありましたがこれを組織統合することが1番目の仕事でした。組織統合を行なう時にその他の出版や資料収集の委員会も統合したいと学長名で打ち上げました。その計画は図書館側で作りました。

その時点では学内の教職員も学生も夢物語だと言っていましたし、実行にあたってはかなりの抵抗がありました。多くの施設を持つ美術学部の教員が施設が少ない人文学部に施設を奪われてしまうという発想になってしまうのですね。私たちは全学の人が利用できる施設にするのだと説得し理事会とも話し合いました。学内のコンセンサスを得るのは非常に難しかったです。そして戦略構想から1年半で実現することになりました。ここで図書館とAVセンターは場所は離れていましたが統合でき「図書情報館」という名称を付け学内外に宣言しました。この時点でそれぞれの施設に専任の職員が入り責任を持って運営するという体制ができました。また、この時点から施設を管理するということから新しい総合情報センターを運営し経営していくという意識がだんだんと生まれてきました。

この辺から戦略的な物の考え方が必要だということが意識されてきました。

この組織統合が成功した時点から急速に新しい建物を建てるという事が学内でコンセンサスを得られ着工することが出来ました。

建物が出来ると名称を「図書情報館」から「情報館」に変えました。このネーミングが非常に大切であったと思っています。これを中途半端に「図書情報館」のままにしていたら大学図書館の次元にとどまったでしょうが、「図書」をとり「情報館」とすることが意識を別のものに変えるきっかけになりました。

この建物が出来て約半年開館準備をし一般市民にも開放しました。大学図書館のランキングでも総合評価でも33位であり、学生一人あたりの貸出冊数では3位となりましたが、以前は下から数えて何番目かといった図書館であると自覚していました。

京都精華大学は学生数は3,700人、蔵書数も20万冊しかありませんが、入館者数は26万もの入館者数があり、内10%が一般市民の利用となっています。館外貸出数は約9万点となっています。

私たちの最も大切な目標としていることは利用者(顧客)にいかに喜ばれるかということです。

組織統合はこのように進めてきましたが現在とのようになっているかと申しますと

「情報館」は総合情報センターであり一つの事業として大学図書館の情報館があります。ですから、いわゆる大学図書館としての機能は図書情報課です。情報館の機能は7つに分けられるのですが統合するには情報処理が大事となります。情報館が他とは違う所は情報を発信するという事業を非常に大切に考えています。文化情報課に博物館部門、研究所部門、出版部門、生涯学習部門を入れています。多くの大学では独立しているものを情報館ではまとめているのですが、結果として新しいスタイルの大学図書館を作ることができました。全体として考えても京都精華大学型という新しいモデルを作ることができました。

私たちが目指しているのは情報館を媒介にした大学のコアスペースを作りたいということがあります。もうひとつは学部単位とは別のもう一つの大学を形成するということがあります。具体的には、比叡山に表現研究機構の設立があります。これは情報館の活動を基盤に立ち上げました。表現研究機構の中に文字文明研究所があり所長を外部から教授として招いたのですが情報館に所属する教授として採用しています。普通は学部に所属している教員を情報館に所属してもらい、今後も拡大していくことを可能にしています。今はまだ授業は行なっていませんがワークショップや映像講座をおこなってきました。

このように情報館はもうひとつの大学になりつつあります。

学長もこれからの京都精華大学の知的な活動は学部から情報館に移っていくだろうといっています。いわゆる大学図書館という枠からはみ出しています。

組織としての特徴は館長は運営を統括し、次長は業務を統括するというように住み分けをしています。情報館には3つの課があり各委員会があります。

情報館の特徴として非常に専任職員が少ないということがあります。現在の専任職員の数は次長課長を入れて5名しかいません。これは情報館が立ち上がるときに情報館をいかに運営していくかというプロジェクトチームを作り検討をしていったときに、専任職員が何名必要になるのか計算をしたところ26名必要になるとなったので、常務理事会に報告したところ10名でやるようにとの指示がきました。そこで6名でやるので4名分の人件費でアウトソーシングを導入したいと提案し認められました。これは間違っていなかったと思っています。多くの大学図書館にとってはいかに多くの専任職員を獲得するかが課題だと思いますが、専任職員職員が多くなるほど組織としての意志決定ができなくなるという問題がでてきます。情報館は日本の大学図書館では大胆にアウトソーシングを進めました。1997年度のアウトソーシングの方針は専任を政策立案集団化したいというです。ただ専門的な職務を努めたらいいというだけでなく政策を立案しなければ専任としての意味はありませんよと明確に打ち出しました。それから大学図書館としての業務は一括して業務委託、経営資源を有効活用とくに人的資源の有効活用を打ち出しました。目標は組織の再設計です。

つまり情報館設立の為のさまざまな活動はリストラをやるということで説明できます。

リストラは人員整理みたいに思われていますが、本当の意味は事業の再構築です。組織、施設、機能といったものを統合し、その中で専任職員の数も減らしたのです。

大部分の仕事は誰がやっているのかということですが、それを派遣職員が行なっています。カウンターの99%が業務委託のスタッフです。では専任職員は何をしたら良いのかが問われていると思います。大学図書館の仕事は99%業務委託してもきちんと動きます。それはいい加減な仕事かといえばそうでは無く、専任職員だけでやっていたときよりも立派にやっています。ただ、業務委託だけで全てが動くというだけではなくて、情報館のもう一つの仕組みがあり、情報館で教員や才能ある人を嘱託で雇うことができます。多くの人は嘱託や非専任をランクの低い、専任の仕事の手伝いと発想していますが、情報館ではそうではなく非専任の管理職を作ろうとしています。情報館の中での採用は許可も出ています。

実は今年の7月から情報館の図書館部分には専任が1人もいません。

では誰が責任をもって運営しているのかということですが、名目上は次長が運営していますが実質的な課長の職務を行なっているのは嘱託(課長執行補佐)です。

課長の仕事を業務・学術・人事の3つに分け、業務担当主任・学術担当主任・人事担当主任という嘱託を置きました。現在は人事担当主任はいなくて2主任で動いています。

業務担当主任がやるべき仕事を業務委託の方に大分ずらして業者の方でやるように修正しました。

ですから情報サービスをする部門いわゆる大学図書館には大学図書館員の仕事と大学側のマネジメントという仕事があると考えて下さい。大学側のマネジメントは課長を始めとする専任のやる仕事です。大学図書館員のやる仕事は業務委託された業者が運営するものです。

どこかに業務委託させるというと手伝いをさせるというように思われるかもしれませんが、アウトソーシングということの本来の意味は私たちよりも優秀な人に担当している業務を委託してしまうということです。いままでの業務委託は中途半端なものでした。委託という契約はしていましたが実は課長が指示をして動かしていました。しかし様々な問題が出て激変する状況に対応できなくなりました。とくに労務管理がうまくいかなくなり従来の人材派遣会社では情報館のような所は運営できなくなりました。もう少し高度なアウトソーサーに依頼しなければ動かないと経営判断しました。そこで派遣会社を再検討し業者の変更を行ないました。

業務委託ということは請負ということに言い替えられます。アウトソーサーとは請負業のことです。しかし業務委託に移行しても実態は派遣契約と変わりなく色々な問題が起こりました。定型業務(標準化された業務)は問題無いのですが非定型業務(創造的な業務)に移っていくのはなかなか難しい。

2段階として実験している段階ですが、現代のような劇的な状況変化に対応できることが大切となります。その中で効率だけを求めるのではなく権限を与え働きがいの有る組織構造に移行しなければいけないと思っています。つまり意志決定の権限を委譲することが大事だと思います。

大学図書館で様々な事を計画し実行する場合難しいのは意志決定です。これは専任が多いほど難しくなります。私たちでなくてはできないという仕事をやっていくためにはサイズの小さい平坦な組織で独自性を出すことが大事だと思います。口で言うのは簡単だが実行は難しいことです。出来るだけ少ない人数で、3人位で様々なことを動かすのがいいと思います。

委託のレベルでいうと情報館が立ち上がってから3年間は人材派遣で行ないました。業務は職員が人材派遣のスタッフに指示をするという形で動かしました。どちらかというと専任職員がお手伝いする形でした。情報館が他とは違うのは始めからスタッフに任せたということです。その結果次の段階に移れたのだと思います。3年経ち業務委託に替えました。しかし、形の上での業務委託であり実態は派遣契約と変わりがありませんでした。今年から戦略的なアウトソーシングに変えていかなければいけないと思います。本当に業者に任せてしまいます。大学図書館の運営をするのはもう業者なんです。大学側と業者との戦略的な話し合いで業者が勝手にやってしまわないように大学がコントロールする形になります。最終的にはアウトソーシングを乗り越え業者と大学とで本当の意味でのパートナーとならなければいけません。そのためには大学図書館の仕事のビジネスモデルを作りたいと思います。これを理屈で言うと経営手法のリエンジニアリングで位置付けられると思います。10年に渡る建設事業と5年に渡る実地の運用ですがこれを説明するのはリストラです。

最小の専任職員で創造系の仕事を活性化するというのを実際にやっているわけですが、これだけではダメだと思います。情報館の業務プロセスを抜本的に再構築するリエンジニアリングが必要だと思います。業務プロセス(図書館活動)をひとつひとつ解き明かして外部の人たちにやってもらえるように仕事の構造を全部明確する必要があります。

それをやる過程で情報館型の大学図書館の仕事のスタイル(ビジネスモデル)が明確になるだろうと期待を持っています。これは自分達だけでは分からないので外部から来た人の目を通してチェックしていく中で明らかになると思います。

私はこのモデルは広がっていくと思っています。情報館ではこれまでは新しい仕事を作ることをやってきましたが、これから5年間は業務についての改善に力を入れもう一度情報を中心とした大学図書館を再整備しなければならないと反省をしています。

リストラとかリエンジニアリングという経営手法を実現するための手段がアウトソーシングです。アウトソーシングをいかに位置付けるかが大事なことです。アウトソーシングというのを専任職員の仕事の手伝いと考えるような次元では意味がありません。

仕事のやり方を抜本的に変えるということです。一例をあげますと情報館では自動貸出機を共同開発し貸出業務を置き換えました。しかしこの自動貸出機はまだ広まっていません。何が問題かといいますとリエンジニアリングに問題があるのです。多くの大学が12台と機械を導入していますがそれの使い方がカウンターの忙しいとき為のものだったりプライバシー保護の為のものだったりといった補助的な位置付けでカウンターでの貸出業務は減っていません。情報館では違います。自動貸出機を4台設置しカウンターでの貸出業務を無くしました。自動返却の機能も付けることもできましたが利用者が返却の手続きを行なったか職員が確認する必要があるので故意にその機能は付けませんでした。確認はアルバイトに確実にやってもらっています。また入退館管理装置を導入し人の入退館をチェックできるようにしました。物の動きと人の動きを全て自動化して図書館の業務プロセスを変えてしまいました。情報館ではカウンター業務から貸出業務を無くし利用者に大学図書館としての本質的なお世話をするというように業務の内容を変えました。カウンターに人は座っていますが仕事の内容は本質的に変わってしまっているのです。

それが情報館がこれだけ利用される一つの理由です。自動貸出機を導入した図書館で状況が何も変わらないといっている所が多いですが、機器の導入といっしょに運営方法も変えないから効果が出ないのだと思います。これがリエンジニアリングだろうと思います。

情報館の基本的なコンセプトは開かれていることです。そのことを大切にしています。

フロアから事務所が丸見えとなっていますが、それが精神的にも良いのだと思います。

また情報館は状況に応じて家具等で仕切り空間の使い方を変えています。また、資料・機材を使ってもらうことを最優先に考えています。

私達の目を向けている方向は利用者の方を向いて仕事をしているということです。

 

Q : 専任職員に政策立案等が求められていますが教育研修プランについて

 

私の考えですが、今のシステム情報課長は教員としても研究者としてもかなりのレベル者です。最初は嘱託から専任に変わってもらった人です。文化情報課長もやはり研究者としてレベルの高い者です。大学図書館に限らず専門職の意味が考え直されるべきだと思います。これからは図書館の専門より政策立案能力が重要とであり、学外にも通用する人物が求められていると思います。図書館の専門家のレベルで考えていると議論を誤ると思います。私は図書館の仕事は全て委託できると思っています。図書館員がマネジメントの専門職になることも考えられますが能力については様々な大学の色々な経営に携わった人が情報館に来た方がずっと有能だと思います。

 

大きな大学の図書館の建設計画で図書館員が研究会を作り数年に渡って研究し素晴らしい考えをまとめたが図書館建設にはまったく活かされなかったということがありますが私はこれは図書館員側に大きな原因があると思います。経営する側と協力しなくてはどんなこともうまくいきません。図書館の狭い世界だけでは理想は実現しません。

 

Q : 自己評価・客観的な評価などについて

 

まだ、客観的な評価方法はまだ出来ていません。私が言った満足度はカウンターのサービスに対する市民や教職員、学生などについての反応です。情報館が出来て2年間位は非常に感謝の声が寄せられました。上質なサービスを提供しているかどうかは評価できませんが、「利用者の満足は職員(働いている者)の満足にある。」という言葉で言い換えられます。

働いている者が満足しない限り利用者も満足しないというのは私も確認しています。

そういう関係をうまく作れるといいのですが、メンバーも変わっていきますし情熱も冷めたり状況は変わっていくので何時までも継続するものでもありません。始めは目新しいものでも年数が経つと当たり前のものになっていきます。

 

Q : 派遣職員が正職員になることや職務分担について

 

派遣職員が嘱託になることはあります。大学図書館の仕事は専任と嘱託の仕事になります。業務委託で来ているスタッフは経営には関わりませんがそれ以外は全部を行ないます。

また各種の委員会の司会もスタッフの主任が行なっています。

 

Q : 評価制度について

 

評価制度はありません。京都精華大学では教員と職員の給与の差がありません。

職員が教員に対等に認めてもらうためには高い水準での仕事が求められています。

 

Q : 広報について

 

情報館の出版部門では木野評論を出していますが大学名は出していません。楽屋落ちの編集ではなくお金を出して買ってもらえるように編集し一般書店で販売していますが、これは大学の知的水準を示していると思います。京都精華大学に来てくださいという広報は本当の広報ではないと思っています。

図書館の公開でも情報館は何の条件(制限)も付けずに一般公開しています。

 

Q : 公開について学生の声はどうでしたか

 

公開については学生の了解を得て実施しました。試験期間とオリエンテーション期間は遠慮していただくと利用規定には書いてあるのですが、無視する利用者が多くなりすぎ、かなりの批判が学生から出されました。それで今年からは規定どおりに実施することにしました。

 

Q : 外部公開の利用登録料(1,000)の理由

 

これは実費です。カード代とデジカメでの撮影とか作成の時間が必要なので郵送したりとかかかっています。近隣大学は3,000円です。近隣大学の金額は収入のためです。

 

 

Q : カウンターミーティングについて

 

業務委託のカウンターどうしで特に時間を決めず随時行なってもらっています。

別の角度でいいますと私は利用者教育という発想は間違っていると思います。利用者教育という発想は顧客開発(利用者を増やす)という事をあらわしていると思いますが、利用者をコントロールするという発想は無くした方がいい、ではそれで動くのかというと、実はその方がモチベーションも高まるので、現場に任せてしまうというのがこれからのやり方に近いと思います。上からは方向性を示し、コントロールを止めたほうがひとりひとりが主役となって動く事ができると思います。

 

 

 

Q : 図書館運営戦略研究分科会と何かと逆質問

 

私は基本的に現場の実践に基づいた理論以外は現実を変えられないと思っています。

ですから、現場を変えられない限りどんな立派な事をいってもどうしようもないと思います。ほんの少しでも現実を変えられる事をやる必要があり、そこから出てきた理論だけは普遍性を持つと思います。もっとも大事な事は大学の経営をしている人達と協力する事です。そういう人たちの支持が無い限りはリストラもリエンジニアリングもアウトソーシングも一切出来ません。大学の方針にならない限りは一切無駄です。どうやってその人たちをその気にさせるかが問題です。

 

 

Q : 情報館のマンガ学会設立構想を大学の課題として置き換えた件について

 

テクニックなどはありません。私達は図書館のことだけを考えているのではなく常に問題意識をもっているのです。問題意識は常にいくつかもっていて、何かを説明する際に具体的にこうすればこうなると言えるかどうかという所だと思います。こうすればこうなるということをいつも持っていないとチャンスの時に出せません。経営側とは常に意志の疎通を行ない大学の方針と図書館のやりたい事の焦点が合うようにしておかないと。チャンスが来たときに気が付かないし、掴む事ができなし、継続する事もできません。