JASPUL-CILC

UPDATE:2005/07/25
今日そして今後の大学図書館員の研修について、OCLCの展望

ジェイ ジョーダン
OCLC会長および最高経営責任者

私立大学図書館協会国際図書館協力シンポジウム
東海大学
2004年5月14日

本日は日本私立大学図書館協会の皆様と同席させていただき大変光栄です。本日の議題は、デジタルライブラリー時代を迎えつつある環境での大学図書館員の皆様へのトレーニングプログラムについて、またOCLC協同体が直面している困難な課題およびその解決策についてです。話の内容としては、OCLCの機構、情報環境の最近の動向、OCLCの発展のための戦略をカバーしていきます。OCLCの発展戦略とは、図書館や他の学術機関が現環境の中で発展していくこと、そして未来のデジタルライブラリーを構築することの一助となるものです。未来のデジタルライブラリーは、紙媒体、電子媒体双方を備えるものとなるでしょう。そのために求められるのは、図書館員の仕事において伝統的な技術、革新的な技術双方でありましょう。このことが、大学図書館員の方々へのトレーニングプログラムがかつてより重要になっている理由です。本日私がお話させていただく動向や指針が、今日そして未来の大学図書館員の方々へのトレーニングのますますの発展のためにお役に立つことを願ってやみません。まず、はじめにOCLCのバックグラウンドについて軽く触れてから話を始めさせていただきたいと思います。


今日のOCLC

現在、OCLCは、84ヶ国、49,000以上の図書館にサービスを提供しています。職員はおよそ1,100名おり、860名がメインキャンパスのあるダブリン、オフィスのあるカリフォルニア、ニューヨーク、ペンシルバニア、ワシントン各州、ワシントンDC、カナダ、フランス、メキシコ、そしてオランダにおります。


公共の目的

OCLCは、非営利・メンバー制・コンピューターライブラリーサービスそしてリサーチ組織です。我々はドットコムではなく、ドットオーガニゼーションと言えましょう。1967年の創業時からOCLCの公共的な目的は、より遠くより深く世界中の情報にアクセスすること、そして図書館のコストを削減することです。その目的によって我々の計画と活動は支配されているのです。これらの目的をサポートするためにOCLCは、強力な財務基盤を維持すべく努力をしています。その手段として、我々はビジネス的手法を用いています。それによって、環境に応じた発展、技術的なプラットフォームのグレードの向上、リサーチと開発の実施、そしてさらに、価値のあるプロジェクトの助成を目指しています。それらは図書館およびその利用者の利益のためです。我々はメンバーシップオーガニゼーションです。Governing memberとは、全所蔵目録をOCLCデータベースであるWorldCatに提供している機関を指します。Governing memberは、66人から成るメンバー評議会への代表を選出しています。メンバー評議会は1年に3回開催され、15人から成る理事会へ6人の代表を選出しています。OCLCは図書館によって、図書館とその利用者のために管理運営されているのです。


図書館協同体

先に申し上げたように、OCLC協同体は現在84ヶ国、49,000以上の図書館からご参加いただいており、世界的な情報ネットワーク化に積極的に取り組んでいます。OCLC協同体は真に国際的なコミュニティです。アメリカ国内では39,000ほどの図書館がOCLC協同体に参加しています。アメリカ以外では83ヶ国、9,000以上の図書館が参加しています。アジアパシフィックでは、主として高等教育機関の図書館が3,500以上、カナダでは900以上、ラテンアメリカおよびカリブでは700以上が参加しています。ヨーロッパ、中東、アフリカにおいては4,600以上の機関がOCLC PICAに参加しています。OCLC協同体は世界的に広がりつつあります。そして世界的な情報ネットワーク化は我々にとって、理論的且つ実際的な案件なのです。


OCLCのサービス

OCLCが図書館に提供しているサービス分野は、目録作成、情報資源の共有、リファレンス、そしてデジタル化された収蔵品の管理と維持です。また、その他にもnetLibrary 部門では、65,000以上のeBookへのアクセスを提供しています。また多くの方が既にご存知の通り、Dewey Decimal Classification を発行しております。我々はメンバー図書館とともにWorldCatの管理と維持を行なっています。WorldCatは、世界最大の書誌データベースでありOCLCの中核サービスの土台となるものです。昨年、図書館は目録作成のため5,470万回OCLCを利用し、230万の書誌レコードがWorldCatに追加されました。FirstSearchについては1億人のエンドユーザーがリファレンス検索を行いました。記録によると930万件の図書館間貸借がILLシステムを通じて行われました。次に、OCLC協同体の最も重要な財産であるWorldCat書誌データベースについて少々お話させてください。


WorldCat

WorldCatはまぎれもなく、図書館が互いに協力することによって大きな力を生み出したすばらしい例のひとつであり、且つ模範となるものです。それは、WorldCatが、絶え間ない技術革新の中でこの30年以上に渡って価値を提供し続けてきたからです。WorldCatを通じて、図書館は所蔵目録を電子的に統合してきました。そしてそれに伴い、1つの図書館では持ち得なかったような情報資源を図書館とその利用者が利用できるようになったのです。WorldCatは現在、5,400万のレコード、9億2,100万以上の所蔵館情報、または所蔵館シンボルを有しています。我々の計画はおよそ2年以内(2006年の後半中)に10億の所蔵館シンボルを有することです。例えWorldCatが図書館の世界において最も優れたツールだとしても、魅力あるデータベースであり続けるために変化し続ける必要があるのです。我々はWorldCatを変えるための重大プロジェクトの只中にいます。そのプロジェクトとは、WorldCatを、書誌データベース兼オンライン総合目録から、世界的にネットワーク化された、テキスト、画像、音声、動画から成る情報資源へと変容させるものです。そのことについては、また後ほど触れたいと思います。


日本の図書館とOCLC

日本の図書館はOCLCの世界的協同体おいて重要な役割を担っています。日本の図書館が初めてOCLCに参加したのは1986年のことでした。それ以来630の図書館がOCLCにプロファイル登録をしてきました。現時点では200のユーザーが利用しています。2003年6月末締めの会計年度における日本の図書館のOCLC利用状況は次のとおりです。
目録作成:99,732件
WorldCatへのレコード追加:7,930件
FirstSearch検索:37万件
WorldCatには120万件以上の日本語のレコードがあります。それらは世界中のOCLCメンバーから提供されものです。WorldCatの中の言語別レコード数で日本語は第5位となっています。ちなみに、4位はスペイン語、3位はフランス語、2位はドイツ語、1位は英語です。ところで、この早稲田大学図書館の写真は1998/99のOCLC Annual Reportに掲載されたものです。


紀伊國屋書店

1986年以来、日本における唯一のOCLC代理店は紀伊國屋書店であり、主に大学図書館に対してOCLCの製品とサービスを提供しています。日本では、200以上のユーザーにOCLCの製品とサービスをご愛用いただいております。日本の図書館およびOCLC共同体に代わりまして、紀伊國屋書店の尽力に対し、感謝したいと思います。


早稲田大学

OCLCは、協同体活動における早稲田大学のリーダーシップに対して、大変有り難く存じております。早稲田大学は、WINEシステムで作成した日本語書誌レコードについて、1995年よりWorldCatへの提供を開始し、全3段階中の3回目のバッチ処理を完了した時点で、そのレコード数は78万件に達しました。さらに、今年の4月より、毎月約3,000件の日本語レコードを提供していただくことになりました。総合してみますと、西洋文献も含め、早稲田大学からはこれまでに138万件以上の所蔵情報がWorldCatに貢献されたことになります。これは、WorldCatを通じて行われた極めて大いなる貢献であります。なぜならば、世界中の研究者や図書館から寄せられる様々な要求を満たすからであり、特に日本語文献という観点から大変有意義なことなのです。


グローバルILLフレームワーク

日米図書館調整プログラムにおける協議にもとづき、NII国立情報学研究所からの提案により、グローバルILLフレームワークが2002年9月に開始されました。これは、北米と日本の間でISO ILLプロトコルを使用するという初めてのプロジェクトで、NACSIS ILLシステムとOCLC ILLシステムの間でILLリクエストの交信を行うものです。ISO ILLプロトコルを使用する大きなメリットは、ILL担当者が既存のILLリクエストで使用しているメッセージ送受信システムをそのまま使い続ければよいという点であり、別のメッセージ送受信システムの使い方を習得したり、特殊な電子メールリクエストフォーマットを使用したりする必要はありません。NACSIS ILLとOCLC ILLのリンクでは、ILL担当者がILLメッセージのやりとりと、費用の支払いをOCLC ILLシステムを使って実行することができるため、日本研究ライブラリアン不在の機関の多くの研究者にとっても大きなメリットとなります。現在、グローバルILLフレームワークには日本の図書館93館が参加しています。日本の参加館が負担する料金の決済は、OCLC IFMシステムを介して紀伊國屋書店が代行しています。


OCLC Research

Office of Researchは、OCLCの創設者であるFrederick G. Kilgourによって、1978年に設立されました。環境の急速な変化の中で様々な挑戦に直面している図書館に対してのみ、その全力を注ぐ、世界を代表するセンターの一つです。Office of Researchには、研究科学者、システムアナリスト、事務サポートスタッフを含む28名のスタッフがいます。OCLC Researchには2つの役割があります。図書館・情報コミュニティのために非専売の活動を行うことと、OCLCサービスを改善することです。またOCLCは、大学その他の組織との域外研究も行っています。現在進行中のプロジェクトは20ほどですが、今日の情報探求者のニーズを如何にして満たせばよいのか、OCLCおよび図書館・情報学コミュニティが理解できるような支援を使命とし続けています。それでは、最近の取り組みと、新生のデジタル図書館との関連についていくつかご紹介致しましょう。

OCLC Researchスタッフは、コンテンツの配信を促進するための相互操作性の標準規格を推進するOpen Archives Initiativeに関与しています。OAIの世界では、可能な限り多くの機関内知的生産物を収集している機関内レポジトリと大学が、それらを検索可能なオンラインコレクションにすべく実験を行っています。OCLCは、MITとヒューレットパッカードが製作したオープンソースレポジトリソフトウェアであるDspaceにも取り組んでいます。実際のところ、DspaceがそのOAI性能をサポートするために使用するソフトウェアを製作したのは我々です。私たちが手掛けているオープンソースソフトウェアのうち、機関内レポジトリの支援を目的として、データの保管と収集を行うためにOAIプロトコルを組み込んでいるプログラムは2つあります。OAICatとOAIHarvesterです。先月、MIT、Google、そしてOCLCは、世界の17大学との取り組みについて発表を行いました。それら17機関の学術論文コレクションを検索する手段を提供するための取り組みです。文献のメタデータをOCLCがハーベスティングし、Googleがそれを収集します。17機関はそれぞれおよそ1,000論文ほどをアーカイブとして保管しています。


Networked Digital Library of Theses/Dissertations

OCLCは、Networked Digital Library of Theses and Dissertationsのメンバーでもあります。その使命は、学位論文にアクセス可能なデジタル図書館を開発することによって、大学院教育を改善することにあります。これは、従来では、世界各国の研究者には提供できずにいた豊富な資源を顕在化させるための大きな努力の一つです。OCLC Researchは、実験的なElectronic Theses & Dissertations Projectの活動も行っています。このプロジェクトでは、Open Archives InitiativeのProtocol for Metadata Harvesting (OAI-PMH)を使用し、電子版学位論文のメタデータデータベースを作成しています。これらのレコードは、OAIセットとしてハーベスティング可能となっています。現在、34ヶ国の175メンバー大学およびその他の27機関がこの実験に参加しています。それだけの機関の学位論文レコードがハーベスティング可能です。さて、サービスの提供および研究活動の他にも、OCLCは様々なコミュニティにおける図書館の代弁者としても機能しています。


OCLC:図書館の代弁者

たとえば、OCLCの研究者たちは、様々な標準規格の取り組みにおいて、図書館コミュニティの代表者として活動しています。代弁者としての役割の中では、私たちは、OCLCメンバーが自らの計画策定や、自らの支援活動に使用できるような様々な研究やその他情報ソースの開発も行っています。昨年には、世界規模の図書館共同体にとって重大な利益とも言えるトピックを取り上げたレポートをいくつも発行しました。それらのレポートはOCLCのWebサイト上でご提供しています。
いくつかを簡単にご紹介しましょう。“Five-Year Information Format Trends”は、一般および学術文献、デジタル化プロジェクト、Webリソースのトレンドを概説したものです。
“Libraries: How they stack up”は、図書館の経済と活動を世界経済におけるその他のセクター、専門職業、目的と比較したものです。興味深い事実の一つをご紹介しましょう。“世界の6人に1人は図書館利用者としての登録を行っています。”


OCLC Library Training & Education Market Needs Assessment Study

「OCLC Library Training & Education Market Needs Assessment Study」について述べてみたいと思います。2002年に、OCLCは図書館勤務者の研修および教育の必要性について図書館を調査することを市場調査会社へ依頼しました。その結果報告は図書館に各々の機関における研修および教育活動をサポートするための情報を提供しました。この調査はオンライントレーニングに特化しておこなわれ、そしてWBTを利用することを計画している人々という観点からその結果を分析しました。米国外からの32%を含む2,112件の回答が得られました。回答には「Consumer」(消費者)、「Influencer」(影響者)双方からのものが含まれます。この場合、「消費者」とは自らの研修を選択する図書館勤務者を指し、「影響者」とは他の人のために研修方法を選択する図書館勤務者を指しています。OCLCホームページでも公開している調査結果の幾つかをこれから見てみましょう。


報告の結論

この報告では、研修がもっとも必要な分野は、図書館標準化およびその実践、管理能力、そしてコンピュータおよびIT分野などであると結論付けています。もちろんこれらの分野には、多くの研修コースなどがあります。しかしながら、そのような研修方法を得ることができなかったり、また困難であるという理由から決定的な研修のニーズもあるのです。次のような分野では研修を得ることについてギャップがあります。デジタルライブラリーを構築すること、デジタル媒体のコレクション構築および管理、改革変化の管理そして図書館自動化です。研修の影響者と消費者双方とも、図書館勤務者の教育を続ける一番の理由は最新事情に通じることだという点について、同意しています。調査はまた、回答者は自らの研修や教育のプログラムに費用をかけなさすぎており、またインターネットを利用した遠隔学習は費用の面から効率的な方法であるとみなされると強く思っていることを指摘しています。一方、勤務者一人あたりに使われる平均の年間費用は531ドルですが、納得できる費用はそれより30%ほど多い692ドルであろうと回答者は指摘しています。


Eラーニング

2003年10月に、Eラーニングに関するOCLCタスクフォースは、図書館にとってのEラーニング戦略についての白書を刊行しました。そのタスクフォースには、インストラクション技術およびカリキュラムを専門とする13人の図書館員および教員が参加しました。この白書は、図書館およびOCLC協同体がEラーニングにおいてどのような役割を果たすことができるのかということに関しての議論することに今後役立つものと思われます。Eラーニングですが、今日では遠隔学習のみならず、伝統的な教育や学習手法に電子媒体のものを包含した方法であるという概念で理解されています。OCLCでは既に、教科管理システムの中にバーチャルレファレンスサービスを統合することを計画する10の米国および英国の大学と協力することによって、そのタスクフォースの提言の一つに参画しています。参加している各々の機関の指導者たちは、QuestionPointへのリンクを各々の機関の教科ホームページにおくことに同意しました。それによって学生たちは、履修している教科の中からバーチャルレファレンスサービスにアクセスすることができるようになります。


Environmental Scan

今年1月に、OCLCは「The 2003 OCLC Environmental Scan: Pattern Recognition」と題した新しい刊行物をホームページにアップしました。OCLCの戦略的な計画過程の一つとして、OCLC協同体が発展していく諸々の環境に対して我々は深い分析を試みました。「2003 Environmental Scan」には情報専門家との100のインタビュー、250の論文などのレビュー、そして広範囲にわたるグローバルな研究などが含まれます。この調査は、OCLC Board of TrusteesおよびOCLCメンバー評議会との戦略的な論議を刺激することを意図して行なわれ、目的と合致し大きな成功をおさめました。また、この調査は短期間そして長期間の今後のOCLCの計画にとって、大切な資料となっています。OCLCでは、この調査結果をホームページからオンライン情報資源として公開しています。それではこの調査の内容を見てみましょう。


様々なランドスケープ

このレポートは、社会的、経済的、技術的、研究活動および学習、そして図書館の問題などを含む多岐のランドスケープにわたって、種々の傾向を調査しています。調査は、情報消費者の活動に対して大きな影響をもつと思われる各種の変化にも焦点を当てています。各ランドスケープは相互に関係しあっており、そして一つのランドスケープの傾向は、他のランドスケープの今後を形成しています。また、この調査では、図書館ではなくインターネットやGoogleほかの検索エンジンを今までよりも頻繁に利用している新しい情報消費者について、議論しています。おそらくこの調査は、大学図書館員の研修プログラムをどのようなものにするかを決めるのにも役立つものと思います。なぜなら、この調査は、図書館員が従事しているタイプの環境を示しているからです。それでは、ランドスケープのいくつかの概要を見てみることにしましょう。


社会的なランドスケープ

社会的なランドスケープでは、このレポートは情報消費者の自己完結型アプローチへの迅速な動きについて調査しています。これらの情報消費者はネットワークでの処理により多くの時間を使っており、銀行、ショッピング、旅行、研究、娯楽などを自分自身で処理しています。彼らはGoogleのようなインターネット上の情報やその内容に対して満足しているのです。彼らは一般的に、Googleもしくは類似のネットワークから得られた情報について、図書館員が心がけているような結果の信頼性、正確性には関係なく満足しているのです。今日の情報消費者、特に若年層ですが、望むものに対してはいつでもシームレスなアクセスを希望しています。
このスライドは共同技術の現状を示しています。言うまでもなく、図書館はそれらの技術をさらに利用することが求められます。次は、経済的なランドスケープを展望してみます。


経済的なランドスケープ

レポートにあるこのチャートは、世界中の図書館支出の75%は米国、日本、英国、イタリア、フランスの5ヶ国に集中していることを示しています。図書館および類する機関に配分される公的資金は、数年は減少するかまたは低いレベルに留まる傾向が続くものと予想されます。2004年世界経済がどのようになるかということとは別に、限られた資源と限りない要求に挟まれたこの苦境は当面は続くでしょう。
図書館はデジタル資源がさらに増加している中で、内部の資源の配置について再検証する必要があります。最も大切なことは、図書館および類する機関は公的資金提供機関に対して、さらに明白にその価値を認めさせるよりよいサービスができなければならないということです。このことは、大学図書館員の研修という問題にとって多大な含みをもっています。次は、図書館のランドスケープを展望してみます。


図書館のランドスケープ

図書館のランドスケープでは、今日の図書館に影響している、人々、コンテンツ、諸々の課題そして技術的な問題について検証します。一例をあげれば、多くの図書館員そして高度に訓練された情報専門家たちは、ここ5年から10年の間に引退していくものと思います。図書館にとって、これらのポジションを補完すること、またはEラーニングや学術情報の世界などで図書館が新しい役割を担っていくことから生じる、人的資源を新しいタイプの業務に再配置することが必要と思われます。Blackboard、WebCT や大学ポータルのような図書館外のシステムと相互連携するという増大するニーズが図書館にはあります。図書館は引続き様々な形態をもち複雑なデジタルコンテンツというものを管理していく必要があるでしょう。そして、保管、保存、コンテンツのパッケージ化および交換、メタデータなどについて標準化というものに対してさらに焦点が当てられるものと思います。この数年の間に、多くの新しいプロトコル開発がインターネットサービスの関連でおこなわれることが予想されます。その一つの例として、業界標準をもとにインターネットを通してもたらされるビジネス手法などがあげられます。いま申し上げましたことは、このレポートの中の単に一つの例にすぎません。「The 2003 OCLC Environmental Scan: Pattern Recognition」は、OCLCのホームページ上で公開されています。ぜひご一読いただければと思います。


OCLCにおける戦略プラン

さてこの状況下で、OCLCは何をし、どこへ向かおうとしているのでしょうか。2000年、私たちは図書館に、私たちの3ヵ年戦略計画について語りました。それはOCLC協同体を拡大することと、新しいサービスと新しい技術プラットフォームによって、WorldCatをグローバルにネットワーク化された情報リソースに変えてゆくというものでした。2004年の今、私は、著しい進歩をご報告できることを嬉しく思います。私たちは、管理組織をより包括的でより国際的になるよう改編しました。私たちはこの画面上にリストアップされている新しいサービスを開発し、提供しています。統合されたメタデータ/目録作成システム(OCLC Connexion)、毎日24時間稼動のバーチャル協同レファレンスサービス(QuestionPoint)、公共図書館向けの、公共アクセスコンピューティングポータル(WebJunction)、netLibraryのeBook、ディジタルコレクション&資料保存サービスです。また、私たちはWorldCatの変更も順調に進めています。
それでは、これらの新しいサービスの一部について少しお話しさせてください。


QuestionPoint

2002年、米国議会図書館と共に、私たちは、バーチャル・レファレンスデスク協同サービスであるQuestionPointを開始しました。今日、20カ国のおよそ1,000館の図書館がQuestionPointを利用しています。日本では、農林水産省農林水産研究情報センターと国際基督教大学がQuestionPointに参加しています。オランダでは公共図書館約60館が参加しており、オランダ公共図書館協会では、公共図書館の利用者なら誰でもQuestionPointにアクセスできるWebサイトを作りました。
QuestionPointはこれまでに、57,000件以上のチャットセッションを含め、300,000件近くの質問を取り扱ってきました。2004年の1月〜3月の三カ月間の間には、65,800件の回答がQuestionPoint経由で送信されました。グローバル・ナレッジ・ベースには現在7,000件近くの質問&回答レコードが収録されています。QuestionPointによって、私たちはレファレンスサービスにおける協同の新しいモデルを展開しているのです。


netLibrary eBookの特長

2002年、OCLCはeBookの提供会社netLibraryを獲得しました。netLibraryのコレクションには現在、450出版社の、著作権のあるタイトル65,000以上が収録されています。新たに追加されるコンテンツの90%は、過去3年以内に出版されたものです。現在、netLibraryのeBookコンテンツとツールはおよそ8,670の図書館で利用されており、その中には米国外の33ヶ国の598機関が含まれます。
先月、英国の大学・高等教育機関の図書館から成るthe Northwest Academic Libraries (NoWAL)コンソーシアムが、netLibraryのeBook 16,000タイトル近くを利用することに決めました。これは英国の学術コンソーシアムによるeBookの購入としては初めてです。そしてこれは、ヨーロッパで最もたくさんのユーザー(165,000人)に提供される、最大のeBookコレクションとなります。


WorldCat

先に私は、私たちがWorldCatを書誌データベース・オンライン総合目録から、グローバルにネットワーク化されたテキスト、画像、音声、動画のリソースに変更してゆこうとしていることを申し上げました。
30年以上、OCLCはOCLC独自のシステム上でWorldCatを構築し保持してきました。そのシステムはメンバーに大変良くサービスを行ってきました。
しかしながら2001年、Webの世界にもっと早く対応してゆけるようになるために、私たちはWorldCatを、Oracleデータベース技術を基盤とした外部ソリューションによって変え始めたのです。


将来のWorldCat

私たちは現在WorldCatをこの新しいプラットフォームへ移行しており、2005年の7〜9月には独自データベースと古いシステムを終了する予定です。
新しいWorldCatはMARCのみでなく、ダブリン・コアと、IFLAのFunctional Requirements for Bibliographic Records (FRBR)もサポートします。
そして、おそらく、グローバルな図書館協同体にとって最も重要なことではないかと思われますが、新しいWorldCatはユニコードもサポートします。このことは、私たちがたくさんの言語・文字の情報へのアクセスを提供する基礎となるでしょう。


OCLC PICA Dutch Catalog GGC

たとえば、OCLCメンバーは現在、OCLC PICA Dutch Catalogue GGCにアクセスすることができます。このデータベースには、ヨーロッパの出版物およびオランダ語資料の書誌レコード・典拠レコードおよそ1,800万件が収録されています。この目録には、OCLC ConnexionのWeb版でアクセスすることができます。OCLC PICA GGCカタログからレコードを引っ張ってきて、WorldCatに入力することができます。
このデータベースはダブリンにある私たちのコンピュータ室の外にありますが、そのようなデータベースがOCLC Connexionを通じてリンクされたのはこれが初めてです。もう一つの利点は、オランダの図書館およそ300館がOCLCメンバーとなったことです。


Open WorldCat Pilot

私たちがどのようにWorldCatを変えようとしているかの最後の例ですが、私たちは現在、協力の歴史で最大、そして最も意義深いものの一つになるかもしれないテストプログラムに携わっています。それが、Open WorldCat pilotです。私たちは簡略化したWorldCatレコードを、World Wide Webを通じて、初めて一般公開しました。たとえば、ユーザーが様々な書籍販売業者のWebサイトを検索した結果、探していた本がWorldCat参加館にあるのが分かるということがあり得ます。ユーザーはこれらのサイトで、月におよそ50,000回の検索を行っています。ごく最近では、私たちはGoogle search serviceと提携し、WorldCatの簡略レコード200万件のサブセットを、OCLCに参加している12,000の学術・公共・学校図書館のWebベースの目録やサイトへのリンクと一緒に、Google上で提供しています。この実験では、情報を探すのにGoogleを検索することから始めた人が、必要な資料がすぐ近所の図書館にあるという結果を得るかもしれません。ユーザーは既に、月10,000回のクリック・スルーを行っています。WorldCatをGoogleや他の検索エンジンで公開したことは、重大な前進です。


OCLC:グローバル図書館協同体

本日、私は出現し始めている電子図書館へのOCLCの関わりについて、表面に触れただけに過ぎません。私たちが見てきましたように、先には大きな変化があります。出現し始めた電子図書館は、目録のグローバルなネットワークとなり、コスト効果の高い、プラットフォームやスクリプトや言語や資料を超えた世界規模の情報シェアを促進するオープンシステムアーキテクチャと技術標準を基礎に置いた、メタデータ&図書館コレクションとなることでしょう。
見てきましたように、次世代の大学図書館員のトレーニングには多くのチャレンジと機会があると思われます。今は、図書館・情報専門職にとってエキサイティングな時代です。私たちは、人が必要とする情報を、必要な時期に必要な場所で希望の形態で提供するという、長らくの、互いに分かち合った夢を実現し始めているのです。私たちOCLCの見通しでは、協力こそが将来の電子図書館への鍵となるでしょう。有り難うございました。

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