組版・組み付けの流れ

活版印刷では、植字工と呼ばれる職人たちが活字を拾っていく植字という作業を行う。 具体的には、原稿を元に写真のような植字ステッキへ活字を拾っていく。 数行分を拾い終わると、ゲラ台と呼ばれる台へ置き、次の行の植字へ移る。 1ページ分の植字が終わったら、組版のまわりを木綿の糸でしばり固定した。 そこで印刷工と呼ばれる職人たちがインクを塗りまずは簡単に印刷してみて校正作業が行われる。

校正作業は植字工と校正係が担当し、この作業でもし誤字や脱字が見つかった場合には活字の入替を行い修正する。 校正を繰り返したのち、誤りが修正されると本格的に印刷作業へ入るのである。

  1. 植字ステッキへ活字を拾う
  2. (数行分拾い終わったら)活字をゲラ台へ
  3. 1~2を繰り返し
  4. (1ページ分の植字が終わったら)組版のまわりを木綿の糸でしばって固定
  5. 活字面にインクを塗り、簡単に印刷する
  6. 校正作業
  7. 校正作業の結果を踏まえて修正
  8. (誤りが修正されたら)印刷作業へ

本文の植字・印刷を行った後に、本文以外の部分(例えば前付ページやコロフォン)の植字・印刷を行ったようだ。 因みに、初期の刊本には現在でいう標題紙にあたるページがないものも多くある。

出典: 駒澤大学図書館所蔵

キャッチワード/プレスフィギュア

ページの最終行、例えば右下等に単語が印刷されていることがある。これは次のページの最初の1語が印刷されているもので、「キャッチワード」と呼ぶ。 中世写本のころから見られるもので、製本の際に折丁の続きがわかりやすいように用いられていた。例えば写真の左ページの右下に”make”と印刷されている、 これが「キャッチワード」である。

製本工たちはこのキャッチワードを見て、冒頭が”make”となっている折丁を探して製本していけばよいのである。実際に、次のページは”make”という単語から始まっている。 キャッチワードと次ページ冒頭の単語が一致しない場合には、乱丁や落丁、または紙葉の削除や挿入が行われた可能性もある。

出典: 駒澤大学図書館所蔵

ページ下部(地)の余白部分に折記号ではない数字や文字、もしくは印が印刷されていることがある。折記号は別のページに印刷されているとすると、 その数字は一体何を表わしているのか疑問に思ったことはないだろうか。その場合には「プレスフィギュア」の可能性も検討するとよい。

写真では赤○で囲った部分が「プレスフィギュア」である。それぞれの印刷所、印刷機、もしくは印刷工ごとに異なるプレスフィギュアが振り分けられている。 同じであると思っていた資料同士でも、プレスフィギュアの相違によって、版の違いや刷りの違いを発見することもあるかもしれない。

判型

1枚の紙の片側に1ページ印刷すると、両面印刷したとしても2ページ分しか印刷することができない。しかしながら、1枚の紙を 写真のように2つに折ると片側で2ページ、両面では4ページ印刷することができる。このように紙を何度か折りたたむことによって 印刷可能なページ数は変わってくる。

2折判(Folio、Fo、2°):1回折りたたむ

チェーンライン:縦
ウォーターマークの位置:左右どちらかの中央

4折判(Quarto, Qto, 4to, 4°):2回折りたたむ

チェーンライン:横
ウォーターマークの位置:のど側の中央

8折判(Octavo, Oct, 8vo, 8°):3回折りたたむ

チェーンライン:縦
ウォーターマークの位置:のど側の最上部

その他、12折判、16折判、24折判、32折判・・・などがある。

出典: 鶴見大学図書館所蔵

コロフォン

本文のあと、最後の方のページにコロフォンが印刷されていることがある。 タイトル、著者、印刷者、印刷地や印刷日などの情報が記載されていることが多く、 資料の同定や目録作成時に用いることができるだろう。ただし、誤植により記載事項に 誤りがあることもあるので、注意が必要である。

赤字部分を訳すと、「批評家Prisciani」という人名
⇒ 著者の可能性

出典: 個人蔵

“MDXCI.”とあるのは出版年(印刷年)か

参考文献

  • デジタル書物学事始め : グーテンベルク聖書とその周辺 / 安形麻理著/安形, 麻理/勉誠出版/2010.9
  • 西洋書誌学入門 / ジョン・カーター著 ; 横山千晶訳/Carter, John, 1905-1975/図書出版社/1994.5
  • 英語本の扉 : その歴史と役割 / 髙野彰著/高野, 彰(1941-)/朗文堂/2012.8
  • 洋書の話 / 髙野彰著.-- 第2版.-- 朗文堂, 2014.11
  • ABC for book collectors / by John Carter.-- 7th ed. / with corrections, additions, and an introduction by Nicolas Barker.-- Oak Knoll Press, 1995